『夕暮のナックルボール』

 『白鵬の取り組み』
 
 以前から白鵬の取り組みに張り手、エルボ(右腕のカチあげ)が
 多いと、言われていた。そこで実際はどうなのか実態を2017年
 の夏場所(5月)と名古屋場(7月)の取り口を調べてみた。
  
  2017年7月名古屋場所  2017年5月夏場所
 1日 四つ  張り手
 2日  四つ  エルボ
 3日  張り倒し  (マ)張り手
 4日  張り手  四つ
 5日  飛ぶ  張り手、エルボ
 6日  張り手,引き倒し  張り手
 7日  (マ)張り手  張り手
 8日  目の前に手  四つ
 9日  張り手  張り手
 10日  (マ)張り手  張り手
 11日  張り手  張り手
 12日  エルボ  目の前に手
 13日  目の前に手、横跳び  (マ)張り手
 14日  エルボ。引き倒し  四つ
 15日  目の前に手、四つ  目の前に手

   名古屋場所    夏場所
 張り手  7    8
 張り手とエルボ  0    1
 エルボ  2    1
 横っ飛び  1    0
 目に手をかざす  3    2
 四つ  2    3
 (マ)待った  2   2 





















 ◆結果:噂道理の結果であった。
 素直に4っつに組んだのは各場所2度だけであった。
 それ以外の取り組みでは、張り手、張り差し、カチあげ、目の前に手と何か相手を惑わす手を
 打っている。

 ◆今までの白鵬の土俵の取り口(戦法)を探ってみた。
 ・「相手の顔の手を突き出す」; 突っかけたように見せかけて、体を開いて変化して勝つ。
 ・「張り差し」; 相手の意識が少しもうろうとなるように、巧妙に相手の顔・耳の上・
 後頭部を張って、バランスを崩させて勝つ。
 ・「立ち合い変化」; 戦わずして勝つ。
 ・「カチあげ(エルボー)」; サポータをした腕でカチあげる。
   サポータをしているので腕の硬さが直接伝わると同時に滑らないので衝撃が大きい。
 ・「張り手とカチあげ」; 左手で顔を張り右腕でカチ上げる二段構えの策で攻めた。
 ・「待った」; 立ち合い時に有利(先手)に立てるように工夫した。
   立ち合い時自分が有利な時以外立ち会わない、不利だと見たら待ったをする。
 ・「八百長もどき」; モンゴル出身者のときに、相手が横綱、大関昇進時に勝たせたりしている。
   また、強い相手なんだと思わせるごとく勝負時間を長くして、大勝負を装うっている。
   (特に日馬富士戦に多い、昨年立ち合い時に飛んで物議をかもした所為かも知れない)。
 ・「サポータを右腕に絶えずつけている」; 相手が巻き返しにくい。
   サポータがなければ汗で滑り込ませられる(巻き返しやすい)。カチあげに使う。

 ◆白鵬の戦法に読み取れるもの。
 ・上記の戦法を見てみると、非常に戦法が多才で狡猾である事が読み取れる。
 ・「張り手」、「「相手の顔の手を突き出す」などは,相手が立ち合いとすぐの「横っ飛び」とか
  「けたぐり」「張り手」などの奇襲戦に備えての対応で立ち合い変化への万全の対応に備えている。
 ・相撲ルールをよく知ってルールの範囲内で勝つ方法を研究してこれらの技術を取得したのだろう。
 ・これらの技術があってこその1050勝を成し遂げた、この努力には称賛を送らなければならない。

 ◆白鵬の戦法の批判
  ・場外には、横綱としての土俵上の上記のことが態度に品格がない、取り口が下品で汚い、
  などと真逆の評価も聞こえてくる。また、横綱失格だという人もいる。
  ・このままでは相撲道と言われるモラルが壊れていく、このままだと誰もが張り合いになって
  本来の相撲の在り方が乱れてくる。この機に何らかの対策が必要である。
  ・張り手は大相撲の技の一つとして認められていますが、実際は番付上位者か格付け上位の者が
  下位の者に使うことがほとんどで、その逆はあり得ないように見受けられる。
  これは相撲界の悪しき風習(親方、兄弟子といった制度)で残っている。
  ・行事のハッケヨイノコッタで踏み込んで頭から突っ込んでいく、そこで突き出た顔をバシッと
  張るのである。
  本来親方衆、先輩と胸と胸をぶっつけて体でぶつかって行くんやと教えられてきた。
  なのに突然顔を張られるのである(ルールと矛盾した教えである)。

 ◆どうすれば良いのか。提案
 ・張り手は立ち合い時は禁止する。立ち合いぶつかった後の張り手はOK
 ・サポータを使ったカチあげは禁止。
 ・サポータをした腕での「取ったり」は禁止
 ・サポータをした腕での「小手投げ」
 ・立ち合い時の「横っ飛び」、横綱は禁止
 ※最低限これぐらいはルールに加えてほしい。

 ※柔道でも、はじめと同時に足をとってひっくり返して勝った選手がいた。後に柔道らしくないと
   言うことで禁止になった。
   相撲においてもルールであっても相撲らしくない取り口が出てきたのなら、
   躊躇せずにルールを改定してほしい。もう一言、子供に見せたくないルールは変更してほしい。


 ■張り手に関する逸話をネットで拾ってみた。
 ・力道山のいわゆる空手チョップ(英語ではジュードーチョップ)は張り手の応用であった。

 ・軽量力士だった旭道山の張り手は、一発で勝敗を決するだけの威力があり「南海のハブ」の
  異名を取った。

 ・雷電爲右エ門は講談『寛政力士伝』で「八角という力士に張り手を喰らわせて殺してしまった」と
  語られる。

 ・昭和16年(1941年)1月場所、大関前田山は張り手を多用し大関羽黒山、
  横綱双葉山を相次いで破り、張り手の是非を巡る一大論争を巻き起こした。
  なおこの時双葉山は「張り手も相撲の手だ」と語っている。

 ・板井圭介はグルグル巻きにされたバンテージの中にウレタンパッド仕込んだ張り手
  (というより握り拳の掌底を当てた)で大乃国から金星3個を奪うなどの活躍を見せた。
  当然その土俵態度は酷評され、そうした経緯もあって引退後の年寄襲名が認められなかった。


 5/葉月/2017      古風 薫